NGPの有機ELパネルに関しての考察
平井社長はNGPの有機ELパネルの調達先は残念ながら明らかにしませんでした。
まだ未定だそうです。
【NGP続報】「3D対応は?」「有機ELパネルの調達先は?」「通話機能は?」,SCE 平井社長に聞く - 家電・PC - Tech-On!
――有機ELパネルなどの部材の調達について教えて欲しい。
平井氏:何が何でもソニー・グループ内で調達する,というわけではない。コストや性能,供給能力を考慮して,ソニー・グループや外部を含めて,調達先を検討して決めていく。何より,よい商品をユーザーに届けることを念頭に置いている。
有機ELディスプレイに関しても,どこの企業で,かつ何社から調達するのかは,まだ決定していない。(あえて言わないのではなく),本当に決まっていないから言わないだけだ。
【西田宗千佳のRandomTracking】「NGP」と「PSS」でSCEが狙うもの。平井CEOインタビュー -AV Watch
平井:PSP発売当時は、ソニーグループ内からの調達比率が高かったのは事実ですが、6年のうちにずいぶん変わってきています。一般的に言って、色々なパーツがあり、グループ内からの供給がもっとも効率的なものはできるかぎりグループ内から供給を受けますが、やはりコストや性能、なによりも供給能力の点を考え、他社のものの方が良ければそちらを採用していくこともあります。なにより一番良い商品をお届けすることがSCEの使命と考えます。
ディスプレイについても、まだ最終的にどのパートナーとやるのか、それが1社なのか複数なのかも決定していない段階です。
じゃあ、発表されたNGPに搭載した有機ELパネルはどこから調達したか考察したいと思います。
サムスン説が今のところ有力ですが、僕にはその説を支持できません。
サムスン説
・リアルWVGAパネルを量産する能力は持ってない。最新型パネルを搭載しているGALAXY Sは擬似WVGAパネル搭載。
・現時点では自社のGALAXYシリーズへの供給だけでも精一杯。他社に供給する余裕がない。ただし供給能力を大幅に強化するための大規模投資を行う発表あり。
・もし5インチリアルWVGAレベル有機ELを量産できるなら既に自社スマートフォンか他社スマートフォンで採用されているはず。とにかく世界初が大好きなサムスンが、ソニーに自社端末に搭載するものより高性能なものを提供するだろうか?
TMD説
技術力の高いTMD(東芝モバイルディスプレイ)説も有力だといわれています。
リアルWVGAパネルを量産できる技術力は持っています。2009年時点で既に実用化されています。しかし財務面として極めて弱いため、未だに石川の有機EL量産ラインを実現されてないようです。Appleの支援により、やっと2012年に液晶工場のラインを増設できるらしいとか。
とにかくリスクを取りたくない姿勢が見え見えなので、TMD説を支持するには力不足だと思えます。なお、アップルが有機ELのためにシャープや東芝(TMD)へ投資との情報もあるが、2012年以降の話なので、事実だったとしてもNGPに搭載するには、間に合いません。
よって、TMD説はありえないかなと思います。
エプソン説
高分子系有機ELを製造する技術力があると言われています。財務面が弱いため、ソニーに中小型液晶工場を売却している。有機EL開発に集中する可能性もあるが、今のところでは力不足だとの印象を持つ。
LG説
一応有機ELテレビの開発/販売の実績あるメーカー。投資にも積極的。
http://www.shopbiz.jp/lf/news/68563.html
【ソウル=尾島島雄】液晶パネル世界2位の韓国のLGディスプレーは2500億ウォン(約180億円)を投じて有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルの生産設備を増強する方針を固めた。「第4・5世代」と呼ぶガラス基板を使うラインで、同世代の生産能力は当初計画に比べ5割増となる。
当初はLGグループのデジタル製品に使う内製品として使用するとみられる。LG電子は15型の有機ELテレビを韓国と欧州で販売。スマートフォン(高機能携帯電話)への有機EL搭載も検討しているもようで、増産に向けた設備の上積みが必要と判断した。内製に加え携帯電話メーカーへの外販にも踏み切るもようだ。今回の増産投資を足がかりに、ガラス基板が大きく生産効率が高い「5・5世代」への投資も検討する。
LG説も有力ですね。ただしLG製有機ELパネル搭載したスマートフォンがまだ発表されてないので、LGが発表する前にソニーに供給するのか疑問が残る。
最後に、ソニー説。個人的にはその説が本命であると思いたい。
ソニー(ソニーモバイルディスプレイ)説
・ソニーモバイルディスプレイが有機ELパネルを製造している。XEL-1パネルを製造した実績を持つ。業務用有機ELモニターのパネルも製造している。
・NGPの有機EL画質については、WBSニュースでのTV越しで見る限り、白ピークが高く、ダイナミックレンジ感が非常にいい。精細感が非常に高く、リアル解像度であるとの印象。擬似解像度ではそういう感じが出ないはず。XEL-1が5インチになったような印象。
・数年前だが、すでに220億円で投資する計画の発表を行っている。あまり知られてないが、中鉢副会長は有機ELの立ち上げには極めて積極的であるといわれている。大学関連で産学官連携には積極的。ノーベル賞の根岸氏を招聘することができたのは、中鉢副会長の働きかけのおかげと思われる。
・NGP発表会にて"新規開発"の有機ELディスプレイをアピールしている。普通に考えると、ソニーグループが開発したのが自然と思える。
・ソニーは小型のリアル720p解像度パネル搭載HMDを試作している。ちなみに10万円以下で販売する計画があるらしい。(ソース:西川氏のブログ)
・3月に有機EL搭載サイバーショットを発売する予定。伝統的にソニーのサイバーショットは内製率が高い。(他社OEM系デジカメは除く)CMOS/CCDは当然のようにソニー製。背面液晶パネルも、基本的にソニーモバイルディスプレイ製といわれている。(推測だが。)
http://jp.wsj.com/IT/node_47095
国内にLCD工場を2カ所持つことは、資産を削減、製造部門を縮小し収益性を高めるソニーの戦略と矛盾するのではないかという点について、同社の広報担当 者は中・小型のパネルは、デジカメやビデオ・カメラなど同社の製品に使われるため安定的な供給が重要だと強調した。
もうひとつ興味深い情報もある。一眼レフのαシリーズ後継機種に有機EL系EVF(電子式ファインダー)を搭載するのではないかとの情報があるようだ。たしかに技術的には小型HMD用有機ELパネルもEVFに転用できるはずだね。
情報元:
http://digicame-info.com/2011/01/700evf.html
http://digicame-info.com/2010/09/evf-2.html
http://digicame-info.com/2010/08/5533evf200el.html
(なぜEVFを選択したのかという問いに対して)透過光ミラー機には、動画や連写などのいくつかのアドバンテージがある。α33とα55の発売後、その評価は我々の予想よりも肯定的なものだった。それに加えて、我々はより高性能なEVFを開発しているので、次の機種にもこのタイプのファインダーを採用することを決定した。
そういえば去年に日経エレクトロニクスがミラーレス機特集にて理想的なEVFとは何かとの記事を掲載されたな。
さらば,一眼レフ, 「ミラーレス機」の時代へ - 日経エレクトロニクス - Tech-On!
・高コントラスト・高ダイナミックレンジ
・高解像度・高開口率
・低遅延
その条件を実現するには液晶パネルでは力不足。有機ELしかないことになる。
ちなみに、現実世界のダイナミックレンジ比が100億:1以上と言われているとか。
・エプソンから中小型液晶工場の買収で進めている。元々エプソンのものだった鳥取工場はソニーモバイルディプレイのものになっている。液晶工場といっても、有機ELパネルを製造するにはTFTパネルが必須。元々有機ELと液晶は親戚関係のようなもの。液晶工場の中で有機EL製造ラインを立ててもおかしくない。今のところ、愛知工場で有機ELパネルを製造されている。
ここから妄想になるが、有機ELパネルの量産を拡大したいが、主力である液晶製造ラインを確保できなくなる。そこで、エプソンから鳥取工場や中国工場を買収することにした。
愛知工場では足りなくなった液晶製造ラインを鳥取工場などで増設すればいい。愛知工場では余ったラインで有機ELの製造に集中できるようになる。
調べれば調べるほどやはりソニー説が最有力ではないかと思える。懸念は供給能力が課題ではないかと思う。おそらく平井社長が言及できなかったのはソニーグループからの供給能力に懸念を持っているからかもしれない。
予想になるが、初期のNGPあたりは全てソニーモバイルディスプレイ製が搭載されると思われる。ただし、NGP-1000後期型かNGP-2000以降はLGやサムスンからも調達するようになると思われる。(ただしサムスン製に関してはリアル解像度であるのが必須。)
初期型NGPの有機ELパネルはソニーモバイルディスプレイ製である可能性が高い。
ある意味初期型を入手する価値はあるかもしれない。(まあ入手するなら初期ロットじゃなくてもいいし、当面はソニーモバイルディスプレイ製パネル搭載で続けるだろうと思いますし。)
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コメント
まあ,妄想抜きに,社内政治というものを繰り広げてる最中なのだと思いますよ。所詮,本社副社長っていっても,外様ですからね。
クタさんもずいぶん苦労したみたいですからね。
サムソンの場合は,Appleから小形有機ELの供給に見切りを付けられ,東芝/シャープに鞍替えさせられかかってますからね。
量産技術的に枯れかかってる液晶なら,先行投資/量産は,とても有効なんだけど,有機ELのように量産技術が発展途上のものの場合,先行投資したがゆえに,すごく向上した技術に切り替えられ無くって古い技術を使い続けることで供給が追いつかない,ってことはよくあります。
一通り,現世代の量産技術は整ってきたので,やるなら今,なのかもしれません。
あと,例の出戻りの長崎工場で次世代Cell作るとかの噂も聞こえてきましたし,まあいろいろ目が離せませんね。ヨタとガセで捉えてるけど,そのネタ自体はPowerXCell 32iiそのものを指してるので,あながち切って捨てるには惜しい噂です。
ま,いまんところ45nmプロセスでそれをつくるとまた初期型並のでかさと金額になりそうなのが頭の痛いところですけどねw
投稿: kon2 | 2011年2月 4日 (金) 09時14分
あ,誤解なきようと言うか,あまりCell事情の詳しくない人向けの補足。
PowerXCell 32ii自体は,IBMのロードマップから外れてます。
実際動いてるのはPowerXCell 32iv(4PPE+32SPE)です。
32iiはHPC分野で使おうとしていたIBMには無用の長物だけど,
ゲーム・家電分野では十分すぎるシロモノ。
PowerXCellが次世代据え置きPSにって話は一昨年ぐらいからよく言われていた話です・・・
あと,おそらく器よりもサービスが先なので,
サービスが出来ない限りはでないでしょうね・・・
ま,PowerXCell 32のことをCell/BEと言ってるあたりでまあ眉唾で聞き流しましょうね,というレベルです。
(Core iをPentiumとかいってるレベルなので)
投稿: kon2 | 2011年2月 4日 (金) 09時37分
NGPにおけるCPUなどはスマフォの延長線上にあるものですし
そこに関しては割と楽観視してますけど
一番の懸念がこの有機ELディスプレイなんですよね
仮にソニー内製だとしてもそこまでたくさん量産した実績があまりがないようなので不安です
ただソニーが本気で有機ELにかけるのだとしたら今回が最初で最後のチャンスな気もします
是非頑張って欲しいです
投稿: どぐま | 2011年2月 4日 (金) 13時47分
>>kon2さん
社内政治に関しては、数年前はともかく、平井社長はストリンガー氏との関係は極めて良好で(元々米国暮らしが長かったし。)Sony本社副社長クラス幹部も務めている。おまけに次のCEO候補といわれているとかw
もし有機ELの供給能力に懸念を持つなら、ソニー本社にもっと投資してほしいとの働きかけを行うだろうと思います。ストリンガー氏にはその働きかけを無視できないだろうと思う。
懸念?といえば、サムスンはどうやらリアル解像度有機EL製造に移行する目処がついたらしい。
東芝/シャープの有機EL投資についての話は個人的にはないかなと思っています。日経エレクトロニクスの報道によればIPSパネル量産が目的らしいとか。タッチとの相性がいいらしいとか。(iPhone4はTMD製IPSを搭載しているらしいとか。)シャープにはIPSパネルを作ってないはずなので、多分iPad系向け中心になるじゃないかなと思います。おそらく超高解像度パネル狙いかな。
次のCellの話が見えてきたので歓迎したいのですね。情報元の信憑性には?ですがw
そろそろ試作などで準備を行わないとまずい時期になってきたでしょうね。
PS3はPS/PS2世代と違って3~4年目になっても画質的にはあまり不満を感じないので、あと3~4年現役で続いても問題ない感じです。
PS3の10年計画もあったけど、本気で10年で現役をやるじゃないかなという気がします。
2014~2015年あたりまでPS4が出ないだろうと思います。投入時期は2015年になるじゃないかなと予想。PS3の寿命が長ければ長いほど、PS3/NGPマルチの強みが極めて発揮されるし。PS4をすぐに投入されると、NGPの立場が微妙になる可能性もありますし。
そして、PS4は最後の据え置きゲーム機として20年以上使えるようにしてほしいと思います。あとはクラウド対応で完成って感じw
投稿: mkubo | 2011年2月 5日 (土) 01時52分
>>どぐまさん
多分平井社長はPS3の立ち上げの失敗(BDドライブの製造遅れ)を経験しているだけに、慎重な見方にしているだろうと思いますね。まあ大丈夫と思いますよ。
それにしても有機ELを採用するとは本当に驚きでした。久夛良木さんでないと採用しないだろうと思っていましたし。
甘い見方になるかもしれませんが、ソニーグループがあげて有機ELに注力しているので期待してもいいと思っています。ちなみにSMD(ソニーモバイルディスプレイ)社長の挨拶のところで、小型~大型を含めて有機ELに注力すると明言されています。
投稿: mkubo | 2011年2月 5日 (土) 02時01分
城戸センセなんか悲観してますからねー。
でも,サムソンの言うことは話半分,で聞いておかねばなりません。
供給能力に難があるのはS-LCDでも実証済みなのでw
なので,ソニーを含めたミックスなのかも知れず。
だとすると,ハズレとアタリが混在するわけですが,さてはて・・・
それでも,サムソンに気をつけなければいけないのは,枯れた技術の量産能力のみ。
ただ,そもそもリミッターがないんで,過剰供給になりやすいんですよねえ。在庫が1年半とか,メモリみたいにコケるとヤバイですよねー(棒
消費者としては,安く買えるからいいんだけど,ねえ。
---
まあ,クタさんも時期社長と目されていたぐらいなので。
SCEという会社は,どこまでいっても部品を購買する立場なんですよね。
BDの時だって,DVDの時だって,クタさんも外部調達は臭わせていたので,「ありがたく使ってやるからキリキリ働け」ということなんでしょうw
ただ,クタさんが生粋のエンジニアなのに対して,平井さんはその面は疎いので,視えているもの,が若干違うのかも知れない。
まあ,神格化するわけじゃないけど,クタさんは,Wikiとか雑誌で書かれているような破天連な人ではあるけれども,「ソニーが作らなきゃいけないもの」ってものも社内で一番理解してる人だったと思うんですよね。
だから,じゃなきゃ,作りたいものを作ったPSシリーズがあんなにソニー臭いわけがない。本社製品が失った危うさを持ってますしねw
NGPですか?実にソニー臭いですよw
だから,世代交代はうまくいってるなー,と感心するわけで。
投稿: kon2 | 2011年2月 7日 (月) 08時52分
>>kon2さん
とりあえず3月発売の有機EL搭載サイバーショットの分解待ちかもしれませんね。もしサムスン製であれば悲観するべきかもしれませんね・・・(苦笑)
なんだかんだいってソニー製品として尖った製品はPSシリーズばかりですね。NGPの半導体は汎用系かもしれませんが、初代PSPだって一応汎用系+カスタムレベルでしたからね。あまり知られてないけど、初代PSPもそこそこの予算で作られたらしいとか。(正確には当時の90nm半導体工場の稼働率を向上させるために投入した感じとか。)
また、当時のPS2開発環境で移植しやすいのがコンセプトでしたし。そう書くと、基本的にはNGPのコンセプトとあまりずれてないですね。
それにしても製品レベルでいかにもソニーらしいところまで作り上げるのは凄いと思いますね。
やっぱり"ぼくのかんがえた○○”という精神がソニー本社には求められているのではないかと思います。
投稿: mkubo | 2011年2月 8日 (火) 03時35分