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2012年7月27日 (金)

「エアボード」「ロケーションフリー」開発秘話は興味深い

「エアボード」「ロケーションフリー」開発秘話(第3回)

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ソニーOBで、エアボード、ロケフリの開発者で有名な前田氏の開発裏話。
興味深い事が書かれているので、ご紹介したい。

この組織変更こそ、ソニーが凋落する大きな要因につながったと私は考えている。ディビジョンカンパニーそのものは、将来の分社化を視野に入れ、ソニー本社が各カンパニーの株主という体裁を整えようとしたものだったと記憶している。だが、結果はこれまでの事業本部制と大差ない中途半端なものであり、結果は失敗だった。

当時、様々な評論家の方がテレビのインタビューなどで、欧米の経営手法であるEVA(経済付加価値)基準の導入が問題だったいう論調がなされていた。実際に社内にいた人間から見ると、EVAが現場に影響することはなかったと考える。成長戦略ではなく短期的な利益しか目指せないことこそが問題だったのだ。

成長戦略を描けなかった原因は、年齢が若いという理由だけで新規商品の開発を行った経験がない人間を抜擢し、これまでのソニーの屋台骨を支えてきた開発経験者の多くを退任させたことに尽きる。この結果、中途半端な分社意識のみで目先の利益を追った組織運営しかできなくなり、それまでソニーが継続してきた新規商品を世に出すことができない企業になってしまった。要するに“カンパニーごっこ”をしていただけに過ぎなかったのだ。

ソニーが凋落してしまった最大の原因は、2001年に出井氏が推進したカンパニー制施策ではないかとずっと思ってました。ソニーの開発現場第一線でご活躍された著名な前田氏の証言が出てきたので、実に興味深いことです。やはりかという思いが一層強くなりました。ちなみに、出井氏が2005年6月に退陣。2005年10月にカンパニー制が廃止されている。

前田氏の証言によると、2001年~2005年のカンパニー制の弊害は極めて大きかったとわかります。カンパニー制により、ベテラン開発経験者の多くを退任させた点はまさに衝撃的。確かに2002年~2005年あたりのソニー製品には、微妙と言われるようになった時期だ。やはりウォークマンの低迷は代表的でしょう。また薄型テレビの開発も遅れてきた。もしまともな体制だったら、液晶テレビへの投資ももっと早くできた可能性もあります。結果的にやむ得なくサムスンと提携することになってしまったと思ってます。

出井路線の清算に追われた、A級戦犯で色々言われているストリンガー氏は残念ながら流れを好転することができませんでしたが、そもそも凋落の原因を作ったのが、出井氏であるのは間違いありません。間違っても180度変わることはないでしょう。

単に出井氏叩きに終わるのはフェアではないので、出井体制の功罪の功として、以下にご紹介したい。

同じ日経エレクトロニクスの記事にて、"ミスター半導体"こと牧本氏の回顧録が載ってます。最終回は実に興味深いでした。

ドキュメンタリー 牧本次生 回顧録 最終回 世界へ羽ばたく 人材となれ

ソニーの半導体戦略には、出井氏が自らで日立から牧本氏をスカウトし、半導体の先生として世界に通じるような半導体技術者の育成等を図ったようです。

あまり知られてなかったのですが、PS2の初年度(2000年)は半導体向上の歩留まりがかなり酷くて、年末商戦に向けて歩留まり向上を図るのにかなり苦労していたそうです。

"ミスター半導体"こと牧本氏が色々フォローしたおかげで、歩留まりがどんどん改善できたそうです。2000年の年末商戦に間に合ったことです。PS2のwikipediaによると、当時は180nm世代のPS2なので、180nm世代の歩留まりには随分苦労したみたいね・・(国内版初期型PS2は250nm世代。欧米向けの初期型PS2は180nm世代。)

意外にもPS3の半導体にも、牧本氏も関わっていたことです。ソニー社内はSOI製造かバルク(CMOS)製造かで論争したこともありました。2001年に当時の社長の安藤氏と一緒にSOI製造の本家本元である米国IBMへ視察したそうです。それがきっかけに、久夛良木さんがCell共同開発の話を立ち上げたのではと思えます。

結局、牧本氏はSOI技術がリスクの高い技術なので、高性能重視のCellのみSOI製造にし、他のLSI(RSX等)はリスクの少ないバルク製造で製造するようにアドバイスしたことです。今からみても、そのアドバイスは実に適切だったと思います。

今のソニーには、裏面照射型CMOS等で極めて高い半導体技術力は誇ってます。牧本氏の力なくしてはできなかった面は否定できません。

SCEにとっても間違いなく大恩人であるのは間違いありません。出井氏が後押ししたのも事実です。

ただし、功罪の「罪」があまりにも大きすぎたのは否めません。結果論になりますが、もし出井氏がカンパニー制やらなかったら、ソニーがそれほど不振になることはなかったかもしれません。下手すればストリンガー氏がCEOになることもなかったかもしれません。

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ソニー」カテゴリの記事

コメント

今の日本や家電メーカーの状況をみるに、ソニーだけ上手く行くというシナリオは想像しがたいですけどね。
AIBOみたいなものが次々出てきたら面白かったですが。

投稿: | 2012年7月29日 (日) 00時56分

まあ、所詮if論なので、「あれやらなければ、絶対にこうならなかっただろう」という予想はあまり意味がないね。

ただ、2003年のソニーショックは回避できたかもという可能性があったと思います。

その後は2008年のリーマン・ショック等の外部状況は色々ありすぎて、影響はどうしても避けられなかったと思いますね・・ 

投稿: mkubo | 2012年7月31日 (火) 07時13分

ストリンガー氏が素晴らしいのは,
サイロをぶっ壊すとはいいながらも,ソニーをソニーであろうとしたこと。
出井氏がやろうとしていたのは
「ソニーをぶっ壊すこと」
そうとう違うんですよね。

壊れてしまった物を繕っている,いまはそんな状態だと思います。
外様のSCEIがソニーらしさを(良くも悪くも)残していたのが幸いだったというw

会社が傾いていたかどうかは別にして
「ソニーらしさ」が薄まったことはやっぱり出井体制の「罪」の部分だと思います。

技術者のオナニーと言われようともそこそこ尖った部分を持ってるのがソニー製品だったはず。nasneなんて,久しぶりにソニーらしい製品ですよね。

いまのパナソニックが出井体制時のソニー
そっくりなのは気のせいでしょうか。
自分的にはAQUAの件は大失態に見えるのですがw

投稿: kon2 | 2012年7月31日 (火) 10時11分

>>kon2さん

結局、出井体制による後遺症はあまりにも大きすぎたといえるかもしれませんね。

ソニーにとっては"失われた10年"といえるかもね。

SCEは久夛良木さんが独立心で隔離したおかげでwいろんな意味で健在だったといえるでしょうねw

パナソニックに関しては、前体制は確かに色々失態を犯してしまった感じですね。中村氏=出井氏と考えると確かに色々似てますね。

投稿: mkubo | 2012年8月 1日 (水) 07時08分

>>mkuboさま
例えば,トヨタが新社長になって,
「トヨタらしさ」
を再定義しようとしてます。でも概ね好意的に見られているのは
「クルマを創る」ことにフォーカスしているからです。
「クルマ」が持っている世界観に敬意を持って接しているからです。

パナの件は深刻で
もともと何やってるかよくわからない会社だったのが,
余計分からない会社になってる感じがします。
三洋は弱小だった分,ここ最近では慎重にブランディングをしていました。その慎重さたるやソニーよりも上でした。
それを簡単にぽいっとする辺りはさすがパナというか,
エボルタと充電式エボルタという
訳の分からないラインナップを出すだけのことはあるというか。
モバブーの名称を切ったときは馬鹿じゃねえの?と思いましたが・・・
「本当に効くオゾン」を捨て「うさんくさいイオン」を取ったり(これは洗濯機の話)。
まったく持って臭い話ですが,三洋のAQUA,剣道をやってる人間には憧れなんですよね,防具が殺菌・消臭できるんで。つまりは本気で臭い靴も消臭できるんですよね。まあ,わからなくもないんですけどね。オゾンは強力だけど浸透しにくいので,本気で脱臭するには何度も実行しなければならないので・・・イオン消臭はその分お手軽です。ただ,それって売るための機能であって,ヘビーユーザーへの配慮では無いですよね。
ナノイーレベルであれば,ファブリーズで十分ですから。
一時期のソニーがそうでしたが,技術と利用者に敬意を払わない家電メーカーは滅びますよ。

投稿: kon2 | 2012年8月 1日 (水) 09時03分

>>kon2さん

>エボルタと充電式エボルタという
>訳の分からないラインナップを出すだけのことはあるというか。
>モバブーの名称を切ったときは馬鹿じゃねえの?と思いましたが・・・


確かにモバイルブースターの名称はなくなったのは意味不明ですね・・

例えばQE-QL301というUSBモバイル電源に関する情報を知りたいのに、
モバイルブースターか、エネループでぐぐるっても、その情報が出ない。
三洋時代のエネループ関連情報しか出てない。

せめて、新製品へのリンク情報を貼るべきなのではと思った。つまり売る気があんか?と思うぐらい。


QE-QL301という名称は覚えづらいので、どうぐぐればいいか困ってますよ・・w

例えばSCE製品だって、nasneの正式製品名は「CECH-ZNR1J」 というそうですが、覚えているのは、関係者ぐらいでしょうw僕だって全然覚えてないw

単に「nasne」でググればいいからね。


往年の(松下ね)パナソニックの営業部隊は売り方が上手かったという印象があるんですが、今のパナソニックは細かい配慮でさえできないとは、大丈夫かね・・


AQUAの件、残念でしたね。個人的にはシャ◯プ製品に搭載されているようなカルト機能(マイナスイオンとかね)は全く信用できないという感じですが、三洋製品なら、なぜか信用できる説得力はあったと思います。生真面目なものづくりを長年やっていたのが、評価されているかもしれませんね。

投稿: mkubo | 2012年8月 1日 (水) 22時07分

>>mkuboさん
AQUAの件はまあ,いいんですよ。部隊は丸ごと残ってますから。
本当にこれでよかったんかいな?と思わなくも無いだけで。
一消費者としてはパナに飼い殺されるよりはマシだったかな,と思わなくも無いですが。

何かの記事でパナのブランド戦略が出てて,
ああこりゃ危ういなあ・・・と思ってて,
あそこに出ないヤツはどうなるんだろう,と思っていたら,
「炊飯器」「掃除機」「モバイル電源」
おいおい,商品カテゴリそのものかよwてな感じ。

mkuboさんが仰るとおり,今は「検索」でちょい,ですからね。
そういう意味でも「商品名」というか「ペットネーム」は大切ですよ。
コモデティになればなるほど・・・

投稿: kon2 | 2012年8月 2日 (木) 09時06分

>>kon2さん

>一消費者としてはパナに飼い殺されるよりはマシだったかな,と思わなくも無いですが。

確かにパナソニックに残った元三洋関連も、あまりいい話は聞きませんね。懸念通りになってしまったのは残念です・・

投稿: mkubo | 2012年8月 2日 (木) 23時16分

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